伏見稲荷大社 八島ヶ池~末廣大神~稲荷山四辻 紅葉とゴイサギ

当ウェブサイトにおいて、紅葉や桜といった、その時節にふさわしい光景については、特別な例を除けば当年ないし近年の景色を収めた写真を掲載しています。
さらに申し上げれば、そういった季節ものに限らず、コースや展望の状況が変化しやすい山についても、紹介を目的とするのであれば、直近の情報を示すのが適切であろうと考えています。
ですが、今回の記事では過去の話を記録として残しておきます。

伏見稲荷大社 八島ヶ池について

2009年(平成21年)12月の初旬、京都市伏見区に所在する伏見稲荷大社さんを参拝しました。
楼門から本殿に至る参道ではなく、本殿の左手に岐れる石畳道を東進すると、玉山稲荷社のあたりで、そのまま東に直進して(若干、南東に右折して)千本鳥居を抜けて奥社へ至る道と、北に左折して大八嶋社や八島ヶ池の前を通り、産場稲荷さんや末廣大神さんへ至る道に分かれます。
一般的なお参りや、あるいは稲荷山の登拝、京都一周トレイルを歩く場合は前者のコースを取りますが、この日は後者のコースを選びました。
産場稲荷さんで右折して稲荷山に入れば、やがて稲荷山三ツ辻で前者のコースと合流しますので、結果的には同じ場所に出ます。
前者のコースは稲荷山の表参道で、後者のコースは稲荷山の裏参道にあたります。

先ほどの分岐(玉山稲荷社あたりの分岐)で左折すると、俗に「お産婆道(おさんば道)」と呼ばれる道に入り、やがて右手に「八島ヶ池(やしまがいけ)」なる大きな池が現れます。
お産婆道に接しているからでしょうか、この池は俗に「お産婆池(おさんば池)」とも呼ばれています。
稲荷山の山中、熊鷹社に接する「新池」……、こちらは「谺ヶ池(こだまがいけ)」とも呼ばれますが……、その新池とは異なる別の池です。
もっとも、八島ヶ池は新池も水源としていますので、まったく無関係というわけではありません。
「八島ヶ池」の呼称は大八洲(おおやしま)に通じており、伏見稲荷大社さんの本殿からは少し離れているものの、この池や、池に接する神田も神苑として境内に含まれています。

この八島ヶ池に、いつの頃からか大きな鳥さんであるゴイサギさんが数多く姿を現すようになりました。
晩秋、あるいは初冬、まさに今の時期に訪れると「真っ赤な紅葉とゴイサギ」を観賞でき、喧騒のさなかにある伏見稲荷大社さんの中心エリアと異なり、こちらは観光客さんもきわめて少なく、のんびりと紅葉狩りを楽しめたものです。
2009年12月の時点では、お産婆道側から見て八島ヶ池には鉄柵や背の低い竹柵しかなく、柵越しとはいえ池を見渡せたのですが、その後、やや背の高い生け垣まで設けられてしまい、残念ながら、お産婆道側からは池が見えにくくなってしまいました。
子どもらが入り込んで池に転落するのを防止するためだろうと考えていましたが、他の理由があるのかもしれません(→記事の後半で触れていますが、理由が分かりました)。

前置きが長くなりましたが、今となっては幻と化した風景を収めた写真を公開しておきます。
八島ヶ池そのものは今でも別方向(納札所~神苑に入る道)から望めます。

八島ヶ池のゴイサギ

伏見稲荷 八島ヶ池の紅葉とホシゴイ(ゴイサギの幼鳥) 2009年12月
伏見稲荷大社さん。八島ヶ池の紅葉とホシゴイ(ゴイサギの幼鳥)。2009年12月。

赤い紅葉は鮮やかで、その中に赤い眼のゴイサギさんが佇んでいました。
「ホシゴイ」はゴイサギの幼鳥や若鳥の異称・俗称で、褐色の身体に星のような斑点模様が出ることによります。
成体になると藍色(青みがかった灰色)と白色の2色で綺麗に分かれた模様に変わります。

伏見稲荷 八島ヶ池 ホシゴイ(ゴイサギ) 毛繕い 京都市伏見区
八島ヶ池のホシゴイ(ゴイサギ)。暖かいからか気持ち良さそうに毛繕い中。京都市伏見区。

ゴイサギは基本的に夜行性で、夕方頃から活発に行動するようです。
遠目に観察していた感じでは、日中は樹上で眠ったり、うとうとしながら身繕いしているように見えました。

伏見稲荷 八島ヶ池 紅葉とゴイサギ(五位鷺) 2009年12月
伏見稲荷大社さん。八島ヶ池の紅葉とゴイサギ(五位鷺)。赤い虹彩。

生け垣が設けられた時期と前後して、野鳥が止まり木にしていた樹木も伐採され、どうもゴイサギも減ったか見掛けなくなったように思います。
私は地元の人間というわけではなく、時おり稲荷山を登拝しているだけに過ぎず、必ずしも八島ヶ池を確認しているわけではないので、これは思い違いかもしれません。
もっとも、神苑や神田の周辺にゴイサギやアオサギ等がコロニーを造営するのは、伏見稲荷大社さんにとっては好ましい出来事とは言えないでしょう。

八島ヶ池 ツートンカラーのゴイサギ お休み 京都市伏見区 2009年12月
八島ヶ池にて。ツートンカラーのゴイサギさん。お休み中。京都市伏見区。

この池にはなにやら幽霊話もあるとかないとか……。
お産婆道側から見ると、そのような印象を受けるのかもしれません(が、生け垣で、お産婆道側からは池の様子が分かりにくくなってしまいました)。

八島ヶ池から産婆道を北上すると産場稲荷さんに出ます。
この先には多くのお社さんや祠が並びますが、その大半が伏見稲荷大社さんとは無関係の独立した神社さんです。
産場稲荷さんから東に右折して少し進むと末廣大神さんで、こちらでは狛蛙さんや福かえるさんが出迎えてくれます。
稲荷山の山頂でも末広大神をお祀りしていますが、山麓の末廣大神さんは伏見稲荷大社さんとは別口の宗教団体さんです。
知らないと場所が分かりにくいかもしれませんが、たまたま前を通りがかるだけでも蛙さんは目に付きます。

末廣大神 京都市伏見区

末廣大神の紅葉と狛蛙

末廣大神の紅葉 朱色の鳥居と狛蛙 京都市伏見区 2009年12月
末廣大神さんの紅葉。朱色の鳥居と狛蛙。八島ヶ池の近く。京都市伏見区。

翌年の2010年(平成22年)12月も紅葉目当てに八島ヶ池や末廣大神さんを訪れましたが、この年はゴイサギさんを撮影していません。
末廣大神さんの紅葉は撮影していますので、2010年頃に生け垣が設けられたのかもしれませんが、すでに記憶が曖昧です。
少しばかりインターネット上で検索してみましたが、この件に触れた方が見当たらないので、当方で記録として残しておきます。
わざわざ古い話や写真を引っ張り出してきたのは、これが理由です。

この記事を公開した直後、改めて過去のメモを調べてみたら、「2010年はゴイサギが少なかったので写真を撮影しなかった」「2羽しか見掛けなかった」としていました。
まだ生け垣は無かったようですが、この年あたりに八島ヶ池のカエデなどが伐採されたようです。

この件について2018年(平成30年)に追記。
伏見稲荷大社さんが2011年(平成23年)に御鎮座1300年を迎えられるにあたり、境内各所で記念事業が進められ、2010年~2011年頃に神苑(八島ヶ池を含む)の周辺も整備されたとのこと。
確かに、時期的に合っていますね。ようやく謎が解けました。ありがとうございました。
2017年(平成29年)には八島ヶ池のほとり(池の南側)に、「啼鳥菴」という休憩所も新設されています。
追記終わり。

末廣大神の猫

末廣大神 冬の日差しを浴びる猫 京都市伏見区 2010年12月
末廣大神さんにて。暖かな日差しを浴びて冬でも機嫌が良さそうな猫さん。京都市伏見区。
上の写真と下の写真のみ2010年12月撮影。

一般的に野良は長生きできないので、もうこの猫さんもいないだろうと考えていましたが、近年、山友だちさんが稲荷山周辺を訪れた日に撮影なさったお写真によく似た猫さんが写っていました。
「もしかして、このネコは末廣大神さんで撮影されたのですか?」とお尋ねしてみたら、そうだとのことで少し驚いてしまいました。
昔から「狐と仲が悪いので、稲荷に犬は禁物」的な俗説がありますが、猫とは仲が良いのでしょうか。

末廣大神の手水舎

末廣大神 手水舎の蛙と紅葉 2010年12月
末廣大神さん。手水舎の蛙さんと紅葉。稲荷山の西麓、伏見稲荷大社さんの北に所在します。

水口まで蛙さんで、いたるところにカエルづくし。
『麻雀放浪記』などの著作でも知られる阿佐田哲也さんも祭神としてお祀りされている不思議な神社さんです。
お稲荷さんと同様、末広がりで金運に御利益のある神社さんだそうで、蛙さんもガマ口財布と関係があるのでしょうか。

以下は2009年の話に戻ります。
産場稲荷さんで東に道を折れると、末廣大神さんや伏見豊川稲荷本宮さんなどの前を通過して稲荷山に入ります。
細い階段道や山道を登り、ひとまず稲荷山三ツ辻へ。

裏参道で稲荷山四ツ辻へ

稲荷山三ツ辻~伏見豊川稲荷本宮の裏参道コース 落葉の絨毯と数珠繋ぎの猫 2009年12月
八島ヶ池~産場稲荷~伏見豊川稲荷本宮~お塚群~稲荷山三ツ辻~四ツ辻の裏参道コース。
落葉の絨毯と数珠繋ぎで眠る猫さん。伏見稲荷大社。京都市伏見区。2009年12月。

数珠繋ぎで寝ている猫さんの写真を見て思い出したことがあります。
数年前、夜中に稲荷山をナイトハイクしていたら、ある場所で数匹のネコに囲まれました。
それだけではなく、なぜか私の周囲をくるくると周り始め、場所が場所だけに不思議な気持ちに。
その夜はさらにびっくりする出来事が起きたというか目撃しましたが、とても書けません。

稲荷山三ツ辻で千本鳥居~奥社~熊鷹社(新池)から来た表参道と合流し、あとはよく知られた展望地である四ツ辻(見付の峰)まで登ります。
四ツ辻からは稲荷山一ノ峰(上之社神蹟)を参拝したり、京都一周トレイル東山コースをハイキングしたり、さらなる好展望地である稲荷山荒神峰(田中社神蹟)を訪れたり。

伏見稲荷山の帰り坂 本寺山から桃色の京都タワーと京都の夕景、夜景を望む 2015年10月

本寺山 仲恭天皇 九條陵 ピンクの京都タワー 式部の道と稲荷山

2015.10.05

三ツ辻から四ツ辻を目指さず、いわゆる「式部の道」に岐れた先は上の記事に。

稲荷山四ツ辻の紅葉

稲荷山四ツ辻 紅葉と愛宕山 伏見稲荷 京都一周トレイル 2009年12月
伏見稲荷の紅葉。稲荷山の四ツ辻から愛宕山を望む。京都一周トレイル分岐。

この日はあいにくの霞み空で、愛宕山すら色薄い、どこか曖昧な見え方でした。
大阪方面は全くと言ってよいほど見えておらず、せっかくの紅葉や冬の青空も遠景に合いませんが、空気が澄んだ日であれば京都南部の街並みや西山の稜線と重ねても紅葉が綺麗に映えます。

京都伏見 稲荷山荒神峰から大阪の高層ビル群、梅田スカイビルを遠望する 2015年9月

伏見稲荷大社 荒神峰から大阪の高層ビル群、淡路島を遠望

2015.09.27

どちらかと言えば遠くまで見えやすかった日の話は上の記事に。
好条件の日は四ツ辻の奥にあたる荒神峰の展望地から大阪方面を見通せます。

追記

「八島ヶ池」の呼称と表記について

2018年12月に追記。
本記事で取り上げている池の呼称について、伏見稲荷大社さんによると、正式な呼称はあくまでも「八島ヶ池」だそうです(おさんば池は俗称に過ぎません)。
表記も「八島ヶ池」の漢字が正しく、境内の案内図にも正しい位置で示されています(ただし、一部、「八嶋ヶ池」の表記も見受けられます)。
2018年12月現在、Googleマップでは、なぜか、八島ヶ池とは全く異なる別の池を指して「八島ヶ池」とマークされており、「八島ヶ池」を指して「おさんば池」とマークされていますが、これは誤りです。
この件については、伏見稲荷大社さん公式サイトの大社マップ を見ても、一目瞭然の形や、池と啼鳥菴との位置関係、それに「八島ヶ池のほとりの『啼鳥菴』」との解説文から間違えようがありません。
OpenStreetMap は正しい位置に「八島ヶ池」と表示されていますが、色合いの関係で、よく見ないと池であることが分かりにくいです。
OpenTopoMap は正しい位置に「八島ヶ池」と表示され、池の形も分かりやすいですが、全体的な情報量は少な目です。
池の形は地理院地図の写真タイルが最も正確かもしれません。

地図に興味がある方は、下に表示される地図で、左上の「情報」→「ベースマップ」から「OpenTopoMap」や「標準地図」、「写真」に切り替えて遊んでみてください。
初期中心点の右(東側)の池が「八島ヶ池」です
追記終わり。

2019年(平成31年)4月追記。
本記事が多くの方々の目に留まったからでしょうか、いつの間にやら? Googleマップさんから(誤った位置に表示されていた)八島ヶ池のマークが消えましたね。
代わりに稲荷茶寮さんやら啼鳥菴さんやらが表示されるようになりました。
追記終わり。

2019年(令和元年)7月追記。
とくに当方から申し出たわけではありませんが、対応していただいたようで、OpenStreetMap で八島ヶ池の表示が明確で分かりやすくなりました。
現状、八島ヶ池の位置関係を正しく示す良い地図と言えるでしょう。
ありがとうございます。
追記終わり。

伏見稲荷大社 八島ヶ池(OpenStreetMap日本)

クリック(タップ)で「八島ヶ池」周辺の地図を表示
「伏見稲荷大社」 (八島ヶ池は伏見稲荷大社さんの境内)
「末廣大神」 (山麓の末廣大神さんは伏見稲荷大社さんとは異なる独立した神社)

「稲荷山(イナリヤマ)(いなりやま)」
標高233m
京都府京都市伏見区(稲荷山の山体は山科区に跨る)

ABOUTこの記事をかいた人

Maro@きょうのまなざし

京都市出身、京都市在住。山で寝転がりながら本を読むか妄想に耽る日々。風景、遠望、夕日、夜景などの写真を交えつつ、大文字山など近畿周辺(関西周辺)の山からの山岳展望・山座同定の話、ハイキングや夜間登山の話、山野草や花、野鳥の話、京都の桜や桃の話、歴史や文化、地理や地図、地誌や郷土史、神社仏閣の話などを語っています。リンク自由。山行記録はごく一部だけ公開!